【エッセイ】台所の蜘蛛

■【エッセイ】台所の蜘蛛

しばらく前より台所に小さな蜘蛛が棲みついています。胡麻粒よりちょっと大きいくらい。台所で何かする際に見かけます。
もしかすると別の個体かもしれないけど、わたしには見分けが付きません。




その蜘蛛は時々シンクの中にいます。小さすぎるためか、別の理由のためか、そこに落ちると上がれないようです。
芥川龍之介ではありませんが、気付くたびに手助けしてやります。潰さないように気をつけて、そっと手を添えて、這い上がらせてやり、シンクから離れたところに放します。

ふと、外へ逃したほうがいいのかという気持ちになります。でも、もしかすると、こんな小さな蜘蛛は、外へ出すと他の大きな虫に食べられてしまうのかもしれません。蜘蛛は、わたしなぞにはうかがいしれない理由から、この台所で暮らすことを選んだのかもしれません。
そうなれば、わたしが勝手に外に放すことは、蜘蛛にとっては迷惑なことかもしれないのです。

いつか、わたしか蜘蛛のことなど知りもしない家族が、気付かずに、汚水とともに蜘蛛を流しさる日が来ることでしょう。
蜘蛛は今日もシンクにいます。




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